気づけば当たり前に存在している「猫」ですが、一体いつから存在していて、いつ頃日本にやって来たのでしょうか?
ルーツや猫ブームの始まりなど、「猫」について深掘りしていきたいと思います!
祖先はリビアヤマネコ
私達が普段呼んでいる「猫」は、動物分類学では「イエネコ」といいます。
今から約13万1000年程前。中東の砂漠地帯に生息していた「リビアヤマネコ」が家畜化し、「イエネコ」となりました。
2007年に判明
リビアヤマネコがイエネコの起源だと分かったのは、2007年のこと。
オックスフォード大学の研究チームが、3つの大陸に生息するヤマネコと、各地で暮らしているイエネコたちから、計979匹の血液サンプルを収集しました。
そしてミトコンドリアDNAとマイクロサテライト遺伝子の分子系統解析の結果、ヨーロッパヤマネコ、南アフリカのヤマネコ、中央アジアのヤマネコ、ハイイロネコ、中近東のリビアヤマネコの、5種に類別出来ることが分かったのです。
私達と共に暮らすイエネコは、中近東のリビアヤマネコと同じ系統に含まれるという解析結果が得られたため、現在ではイエネコの祖先はリビアヤマネコだという説が最も支持されています。
リビアヤマネコとは
イエネコと比べて足が長く、体長45〜80cm、体重は3〜8kgほどあります。
しっぽは約30cmと長めで、先が細いのが特徴。柄は不明瞭ではあるものの縞模様になっていて、キジトラやサバトラに似ています。
砂漠や混交林など、熱帯雨林を除いた植林に生息していて、夜行性ではありますが薄明薄暮性な面も併せ持っています。
獲物はネズミ、イタチ、モグラ、ウサギ、鳥類から、昆虫やカエルまで幅広く、木登りは得意ですが、地上で狩りをするのが基本となっています。
この辺りの生態はあまり今と変わっていませんね。
ペットとして飼う事は難しいけれど、比較的警戒心が薄くて人懐っこいため、小さな頃からお世話をしていれば家族のような絆が芽生えることもあったようです。
リビアヤマネコからイエネコへ
リビアヤマネコからイエネコに進化、つまり家畜化したのは、今から約9000年以上前だと言われています。
しかし紀元前3000年頃の古代エジプトの遺構からリビアヤマネコの化石がたくさん出土したため、この頃には人と共にあったという説も。
中国から日本にやってきた?
その後、エジプト、ヨーロッパ、アジアと徐々に範囲を拡大。
そして奈良時代から平安時代辺りに、仏教の伝来の際、大事な経文をネズミから守るため、中国の船に乗って日本へやってきたと言われていました。
しかし2011年に、長崎県のカラカミ遺跡でイエネコだと思われる化石が発掘されたため、弥生時代からイエネコは存在していた可能性が浮上したのです。
とすると、仏教が伝わる前から日本には既にネコが存在していたことになります。
じわじわ広がる猫ブーム
平安時代になると、まだまだ貴重な存在であったものの、「唐猫」と呼ばれ、貴族や皇族の間で愛されていました。
第59代天皇の宇田天皇や、第66代天皇の一条天皇が深い愛猫家であったこと、清少納言作「枕草子」や、紫式部作「源氏物語」にも猫が登場することからも、人間と猫の距離はグッと近くなっていることが伺えますね。
そして安土桃山時代。1602年にはネズミを駆除するためにあえて放し飼いをするようお達しが出され、そのお陰でネズミによる害が激減するなど、未だその数は少ないながらも人々の生活に一役買っていたようです。
その力を見込まれて、江戸時代初期には、代わりに猫の絵や、現代でも縁起物である招き猫などが、鼠害を退けると重宝されるようになりました。
江戸時代後期に活躍した浮世絵師のひとり、歌川国芳は、猫の絵はもちろんのこと、猫にまつわる数々のエピソードを残した大の猫好きとして知られています。
やがて現代へ
明治に入ると猫を描く絵師はさらに増え、文芸作品にも多々登場するようになりました。
菱田春草の「黒き猫」や、夏目漱石の「吾輩は猫である」などが有名ですね。
この頃には江戸時代初期と比べて猫の数も安定していて、またその目的もネズミ駆除から愛玩動物へと変化していきました。
昭和に入り人々の生活にゆとりが生まれると、ペットとして飼育する庶民も増えていったのです。
そして平安時代以降、密かに続いていた猫ブームも、現代に近づくと共に更に本格化していきます。
猫のキャラクター、猫の顔文字、猫のオリジナル画像、猫の動画、猫の漫画、猫のアプリ、猫のグッズなど、あらゆる媒体を使って脚光を浴びるようになり、それは今でも留まることを知りません。
おわりに
砂漠地帯に生息していたリビアヤマネコが、人間との共存のために進化し、そしてある時には鼠害駆除で人々の役に立ち、またある時はその愛らしい見た目で人々を魅了し、現代まで私達の暮らしを支え続けてくれました。
その歴史を知ると、猫の行動にも納得がいくところが多々あったのではないでしょうか?
猫を愛した先人たちに思いを馳せながら、これからも引き続き猫ちゃんを愛でていきたいですね。